888 :静閑の夜に 1:2007/08/18(土) 05:48:15 ID:ipJSS5nT その夜は相変わらず星は見えなかったが、雪は止み静かだった。 いや、静かではないな おそらくヘレンのものであろう鼾を聞きながらクレアはフッと笑う。 眠っている仲間達を見た。皆戦場で見せるのとは違う、穏やかで人間らしい顔をしている。 クレアは皆を起こさないよう寝床を抜け出し、洞窟の入り口近くにある大きな石に腰掛ける。 夜になると嫌でも思い出してしまう。あの頃の自分を… クレアは自分の背中にそっと触れる。 かつて妖魔につけられた傷は今はもうない。それなのに時々傷がまだそこにあるような感覚に陥る。 あの時は… クレアは目を瞑る。 あの時は毎日殴られて、蹴られて…薄れていく意識の中、何度そのまま死にたいと思っただろうか。 それでも心のどこかで生きたいと思っていた。そして愛されたいと。 どれくらいあの地獄のような日々が続いたのかわからない。気付いたら声を無くしていた。 889 :静閑の夜に 2:2007/08/18(土) 06:00:03 ID:ipJSS5nT ある日妖魔に連れていかれた町で、同じ年頃の子供達が遊んでいるのを見た。 羨ましかった。自分はなぜあの輪に入ってはいけないのだろうか。その晩悲鳴さえあげられず、歯を食いしばって妖魔の暴力に耐えながら思った。 そしてただただ苦しかった時間は突然終わりを迎える。 「テレサ…」 クレアは右手を胸に当てる。 唯一自分の存在を認め、愛してくれた人。今は亡きあの人は自分の中にいる。そう思えばどんなに辛い事でも乗り越えられた。 「結局、今も昔も私は助けられてばかりだな…」 思わず声に出してしまった。 「ク…レア?」 ビクリと振り向くとそこには眠い目をしたユマが立っていた。 890 :静閑の夜に 3:2007/08/18(土) 06:19:12 ID:ipJSS5nT 「あ…すまん。起こしてしまったか」 「いや…まぁ、起こされたには起こされたんだが…。ヘレンに…」 ユマはそう言って、奥で眠る仲間達の中で、元居た場所から今や遠く離れた所に横たわる戦士を見る。クレアもそれを見て思わずクスクス笑う。ユマはそんなクレアに物珍しそうな眼差しを向ける。 「…?どうした?」 ユマの視線に気付いたクレアは不思議そうな顔をする。 「あ…その、お前がそんなに笑うなんて珍しいと思って…」 ユマはおずおずと言った。 クレアは今自分は笑っていたのかと自覚する。これまで感情を表に出さないように、心の中を悟られないようにして来た。そうする事で自分を守れると思っていた。 「私は…私はお前達と友になれた事に感謝している。楽しいというのがどんなものだったのか、やっと思い出せそうだ」 いつもとは違い、その奥に穏やかさを秘めた銀眼がユマを見つめる。ユマはスッと顔を寄せ、クレアのその綺麗な唇に軽く口付けする。 「私もだ。一緒に食べ、笑い、眠る。それがどんなに嬉しいか、お前達のおかげでわかったよ」 顔を離し、ユマは微笑む。 しばらく二人は洞窟の外に広がる一面の銀世界に浸った。 891 :静閑の夜に 4:2007/08/18(土) 06:34:54 ID:ipJSS5nT 「ずっとこのまま、皆で過ごす時間が続けばいいのにな…」 ポツリとユマがこぼす。 「あぁ…」 クレアは目を細めた。二人は分かっていた。半人半妖の自分達に平穏な日々などあり得ない事を…。 「私はもう寝るよ。お前も早く寝た方がいい」 ユマは欠伸をかみ殺し、寝床に戻ろうとする。と、不意に手首を掴まれた。 「ッ、クレア!?」 驚いて振り向く。 「!!」 クレアの目から涙が流れていた。 「どっ…どうした?!私が何かしたか?」 「っちがう」 「え…じゃあ、…術痕が痛むのか…?」 「ちがう」 「だったら…」 クレアはユマの手を握る。 「すまん…少しだけでいいからこのまま…」 普段は少し鈍いユマにも理由は大体察しがついた。半人半妖となるものの多くは心に傷を負っている。それはどんなに身体が強くなっても消える事はない。 ユマはクレアの隣に腰をおろし、もう一方の手を自分の手を握るクレアの震える手に重ねる。 「明日は星が見えるといいな」 そう空を見上げるユマにクレアは肩を震わせながら、小さく頷いた。 end 892 :静閑のあとがき:2007/08/18(土) 06:41:20 ID:ipJSS5nT うん…多分クレアのせいだから、コレ… ユマはいろんな所でいじられキャラと化してるけど チーム的にはいいポジションにいると思うんだよね… 一歩後ろから ものを見てる感じで… あくまで私の主観だけどね 次はちゃんとエロにするわ でもこういう言葉があるよね… 予定は未定 893 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 07:21:44 ID:dOSkVAJv >>892 朝からいいもの見させてもらったよ。 ありがとう! 894 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 08:25:24 ID:WKqxrHUP >>887タンの才能に嫉妬 ここは神が多いスレでつね お姐さん方分才あり杉 ここで大人クレア×テレサをきぼんしておく 895 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 12:10:35 ID:6jAGye8s >>892 ユマktkr ここって女性人口多いのかね? カンケーないけどペンタブの扱いに慣れない…。 896 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 13:12:41 ID:VUv/WWiv 男性人口のほうが多いのでは? 私は女だけど 897 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 13:17:47 ID:TiLn11a0 女性人口のが多い気がする。特に作家さん。SSでなんとなく性別わかるかな。 898 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 13:37:05 ID:dOSkVAJv レイチェルに挑戦した私は女です。 作家さん女性多い気がする。 ま、どうでもいいさ。 関係ないよ 899 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 13:44:21 ID:VUv/WWiv >>898 私は逆のオードーリー×レイで見たいのですが・・・ 901 :名無しさん@秘密の花園:2007/08/18(土) 15:18:11 ID:deMFSY+U >>892 ありがとー!こゆの大好きだ。 ユマとクレアが会話してると癒される(´∀`*) 等身大で気負いがなくて可愛い。 すごく和めた。 あとヘレンの寝相の悪さは想像に難くないww 朝起きたら360度回転して元に戻ってるから本人は気付かない上に寝言もはっきり言ってそうw 以下熟睡ヘレン 「ぴょー、ぴゅるるるるるる(←鼾?寝息?) …もう食べられないよー、ひゃひゃひゃ♪(寝返りを打つついでにデネヴ辺りに蹴り入れる) 姉さん米粒ついてるぜぇ〜?すぴょー…、へへっ(反対側に寝ているユマ辺りの掛け布を奪いつつ) だから悪いのは依頼者の方だっつってんだろぉおっ!!?…ん、おかわり。ぴるるるるー」