157 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 21:58:25 ID:F97XPWuO 投下する 隠遁中のイレーヌさんに女の子が会いに来るありがちな話 オリキャラ注意 158 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 21:59:41 ID:F97XPWuO 眼が覚めてまず「やばい!」と思った。 母さんに言ったが夢だと言われた。 しつこく親父に言ったらビンタされた。 それでもくたばられるのはごめんだから、まだ痛む頬を撫でつつ走った。 何日も何日もずっと走った。 食べなくても寝なくても平気だった。 ただ死にたくないから走った。 喉だけは渇くので持って来た水は少しずつ飲んだ。 もう何日経ったのか解らなくなって、心細くなってちょっと泣いた。 でもまた走った。 会いに行く。 きっとどこかに居る。 159 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:03:14 ID:F97XPWuO いつも遠くに見ていた山間地帯まで来てしまった。 空気がじっとりしていて暗い。 ふと、立ち止まり振り返る。 あの向こうの、両親は今頃どうしているだろうか? いつもの家出だと思っていてくれたら楽だなぁ。 私はゆっくり土砂の上に崩れ落ちた。 少し寝て、再び立ち上がり歩く。 うたた寝だったけど、 何かが物凄い速さであたしに近づいている夢を見た。 怖いのに、棒になった足が走ってくれない。 「は、は、は、は、はっ」 苦しい。あーまずい。間に合わなくて死ぬかも。 いい加減お腹も空いてそろそろ死ぬかも。 水も無くなったし、あいつに喰われて死ぬか餓死? 死ぬ訳無いじゃん… 大丈夫、ちゃんと剣士様に会う夢も見た。 空を覆う木々の間を縫って、かなり後ろから足音が聞こえる。 あいつが何か叫ぶ声が聞こえる。 ―――やばいマジで死ぬかも。 「……!」 振り返ると、やっぱり人じゃない何かがすぐそこに居る。 笑いながらこっちを見ていた。 足がすくんだけど、ヤツは一歩も動かない。 なんでだ?と思ってたら そいつの体から首がぼとりと落ちた。 血飛沫が気持ち悪い、あと猛に烈臭い。 あたしは疲労のせいにして取り合えずその場にぶっ倒れた。 倒れるだけのつもりだったのに、倒れた拍子に頭思いっきり打って気絶。 ……起きたらまた走らないと。 160 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:05:00 ID:F97XPWuO と思ってたのに、目が覚めたらあたしはあったかいベッドの中にいた。 「…あれ、あたしお金無いんですけど」 暗い。夜になっていた。 果実とパンと林檎酒。食べ物と本が一冊ベッドの上に置いてある。 部屋を見回しても誰もいない。 「あ、ホテルじゃないのか」 ベッドと絵とテーブル、あとちっちゃい女神像が 窓辺に置いてあるだけ。 でっかいロウソクが一本、部屋を暖めていた。 誰がどう見ても善意の紳士様があたしを運んであげたって感じ? パンをちぎりながら、かなり自己中心に考えてみた。 ふと自分の手を見て目ん玉飛び出すかと思った。 「…うわぁっ、痩せすぎ!」まるで骨。 「あ、足は傷だらけだし最悪すぎるー!」 バッタンバッタン暴れていると、頭のでっかいタンコブを再強打した。 涙ぐんで大人しくお酒を舐めて、果実を食べやすいように半分にする。 体がやけに綺麗な事に(やっと)気が付く。 汗くさくないし、泥がついて無い。 なんかいいにおいするし、なんだこれ。 「風呂に入れられた…とか」 「足は大丈夫か?」 今度は心臓が口から飛び出した。 「うわあっ!」 扉から誰かがこっちを見ている。 「…ごめんなさい、あと、助けてくれてありがとうございます」 何も言わずに入って来たその人は、全身が隠れるローブを着ていた。 161 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:06:22 ID:F97XPWuO 何も言わずにその人は椅子に座って本を開いた。 「…あのー、妖魔をやっつけてくれたのってあなたですか?」 ぱり…と、ページをめくる乾いた音がする。 「体拭いてくれたのもあなたですか?」 しーん。 「…だんまりタイプか」 「明日の朝ここを出ろ。四日西に歩けば街につく」 「嫌。四日も今から歩いたら死ぬ」 ぱり、その人はまたページをめくる。 「あのね、聞いて。」 私はこれまでのことを一気に話した。 よく予知夢をみること。 街に妖魔がたくさん来る夢を見た事。 誰もそのことを信じなかった事。 あなたに会う夢を見た事。 あなたに手を貸してもらうために何日もかけてここへきたこと。 今会えて安心していることと、頭のタンコブが痛い事。 クレイモアを呼んでって言ったんだけど、親父にぶっ飛ばされた事も。 「お願いします、みんなを助けて下さい」 「断る」 こいつ……。 林檎酒のコルクをひょいと投げ付けた。 コンと頭に当たったけど微動だにしない。 こ、こいつ……。 162 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:09:19 ID:F97XPWuO 「あーそうだよね、ただの夢だよね」林檎酒をもう一度舐める。 「あんな怖い思いしてまで無駄足だったなんて最悪…」林檎酒を煽る。 「そりゃ親父もビンタするよ、あたしでもやるわ」 果実をかじる。本を開く。パンをちぎるとボロボロ涙が溢れてきた。 「折角、テレサ様とクレア様にお願いしてきたのにな」 「テレサ?」 またびっくりした。 「う、うちの街、噴水前にでっかい双子女神像があって」 「テレサとクレアか」 「そうだけど」 「わかった、引き受けよう」 「えっ…!」 「どの方角から来た?」 「に、西に突っ走ったのでつまり東から来ました」 明日朝出発すると言ってそいつはまたページを開いた。 あたしはなぜかまだ涙が止まらないので、本を閉じて泣き続けた。 「ね、ちゃんとみんな殺してくれる?」 「あぁ」 「…じゃあ、はい」 服を脱ぐ。あいつは見てない。 「あのさ、あたし、お金無いから」 「いらん」 「胸が無いから?」 やっぱり完全無視で本を読み続ける。 「…なんか悪い気がするじゃん、タダで頼むのって」 しーん… 「ガキだから?」 「…テレサ様がいい?」 「……一応処女です」ふ、とそいつが笑った気がした。 本を閉じてロウソクに息を吹き掛ける。部屋は真っ暗になった。 163 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:10:52 ID:F97XPWuO そいつは立ち上がりローブを脱ぐ。 髪長いのは性差ないかもだけど、細いし胸がある。 やっぱり女の人だ……… それも超絶美人の。 「手伝え」 しかも片腕が………… 震えながら衣服に手を掛ける。 「全部だ」 足元まで縋るようにして脱がし終えると、 あたしは衣服を畳もうとした。 だけどそいつがそれを取っ払って、畳み掛けた服は部屋の端でぐちゃぐちゃになった。 そいつはベッドに腰を掛けた。 「物を頼みに来ているのだろう。それなりの事をしろ」 足を組んだので、あたしは膝付いて親指から順に口に含んだ。 埃と土の神聖な味がした。 足の甲をゆっくり舐めているともういいと言うので 立ち上がって自分で服を脱ぐ。 こっから先ってどうすんのとか 手慣れてるから非処女とか思われたらどうしようとか まごついて怖じ気付いてるなんて思われんのは絶対に嫌だとか 色々と考え終える間もなく、腰を抱き寄せられた。 同性の身体って隙間が空かないくらいにぴったりくっつく。 良い匂いだし、柔らかいし。 ふと顔を上げると光る眼が二つ。 ホントに人じゃないのかも、この人。 164 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:12:37 ID:F97XPWuO ベッドに押し倒され、さすがにあたしは怖くなる。 「…っ、」 背中をゆっくり手が這っていく。 始めから覚悟していたけど怖いもんは怖い。 てっきりあたしがご奉仕するのかと思ってたけど違うようだ。 このあたりは街がない。人もいないだろう。 生活してれば人に触れる事自体が嬉しいのかもしれない。 「は…あ……!」 耳元を丁寧に舐められ、思わず声が出た。 暖かい息に肌が泡立つ。 そのままゆっくりと時間をかけてあたしは泣いた。 あぁ、この人はきっとクレイモアなのかも。 目が銀色にきらきら光っていた。 「…人間を、しかもこんな子供を、……テレサ…」 聞き取れなかったけど、 そう言って笑っていた。 なんか可哀相に思えてキスをしてあげた。 「あのさ…ずっと一緒にいてもいい?」 また無視。もういいよ。 「………ん」 胸を噛まれて身体を捻る。 「…私は、お前の用件が済んだらもっと奥へ移動する。」 乳首をちゅう、と吸われ、あたしは声をだした。 「もう探しに来るな」 窓から青白い光が差し込んだ。 今日は満月だったらしい。 165 :名無しさん@秘密の花園:2007/07/21(土) 22:13:49 ID:F97XPWuO あの家で寝た時間が足りなかったのか、 林檎酒に盛られたのか、 あたしは我が家で丸二日寝ていたらしい。 親父が、ローブを纏った剣士様がお前を連れて来たと言った。 どこで会ったのか何か変な事されなかったかとか質問がうざいので無視。 あぁ、妖魔は?と尋くと、剣士様がたたっ切ってくれたらしいと答えた。 窓を覗くと、大人達が 数十ありそうな妖魔の死体の処理を行っていた。 クレイモアだったのかもよーと言うと馬鹿笑いされた。 まぁ誰も呼んでないからね。 でもみんな気付いていると思う。 間に合って良かった、あたしは再び爆睡する。 そしてまた夢を見る。 あの人を受け継いだ誰かが、この街の噴水前で 双子の女神像を見て笑う夢を。